いつも、拍手ありがとうございます!
ひとつひとつ拝見しております。
本編後にいろいろあった話は、必ず書きますので、気長にお待ちください。
リア小説仲間に「先生……甘いのが書けません!」と相談してみたところ、「微糖から慣れてそれが普通になれば、激甘でもなんともなくなります!」と熱く語ってくれたので、今日も練習です。
が、あまり甘くない出来です。
いつも通り恋愛風味を含む、2年後の話です。
おそらく、読み終わった後、みなさん「なにがあった」と突っ込むと思いますが、それでもよろしければ、下の『つづきはこちら』からどうぞ。
「……大丈夫か」
私の前に置かれた料理を見て、旦那様が不意にそんなことを言い出しました。
食べ過ぎってことでしょうか。でもまだ2皿しか食べてませんよ。いつも通りのペースです。
私の前にあったのは、淡いグリーンのソースがかかった、木の実と野菜のいためものです。ふんわりと甘いにおいが漂って、食欲を刺激します。量も普通。どこにもおかしい部分なんて、ないと思うんだけど。
「なにが?」
「食べて大丈夫か?」
ますますわからないよ! 意思疎通が結構できてるって思ったけれど、甘かったみたいですね。
私もまだまだのようです……。でも、そんなに不審な料理でもないし。
フォークを取った私を見て、旦那様はそれ以上何も言いませんでした。いったいなんだったんだろう。
一応、毒とかだったらもっと強い静止がかかると思います。
念のためお肉とかひっくり返したりつついたりしても、変なところは見えません。
旦那様をちらりと見ると、
「気にしなくていい」
と付け加えられました。本当に、なんなんだろう。
周囲の人を見ても、同じ料理を普通に食べています。食堂は活気であふれかえっていました。結構酔っ払いも多い、いつもの光景です。私だけ食べているのがおかしいから、だいたい旦那様はお酒を飲んでいます。いつもながら、お酒だよね? 旦那様の様子は何を呑んでいるか、全く分かりません。水飲むのも、お茶飲むのも、薬飲んでも、お酒飲んでも全く反応が変わらないんだけどね! さすがにお酒飲んだ時は近く寄ったら、匂いで少しわかる程度です。
今日もお水を飲むのと同じペースで、水にしか見えない液体を飲んでいる旦那様。酔わないとは言いますが、限界ってあるのかな。たまに気になります。
とにかく、料理にはおかしいところがないので、お肉をフォークで刺してパクリと食べました。
じゅわっと口の中に広がる甘い木の実ソースの香りと、香草の爽やかさ。
あれ、普通においしい。
内心、首を傾げた時に、それは来ました。
「っ!」
辛い……っていうより、痛い痛い痛い痛い!!
うわああああああああああ!!!
喉をギンギンに刺す刺激、舌は熱いものを食べた時みたいに麻痺しています。
ぐおおおおおお、まさか、さっきのはこれですか! いや、具体的に言ってもらわないと!
涙目の私は、なんとか口の中の大火事をしずめようと、水をテーブルの上で探しました。
そこにあったコップを掴んで、一気に飲み干します。
「げほ!」
ちがう! これ水じゃない! なんか今、喉から胃にかけてめちゃくちゃ熱い感じが駆け抜けましたあああああ!
これ、そういえばお店の人がご飯にサービスだってつけてくれてた食前酒だあああああ!
「ほら」
テーブルで悶絶する私に、冷静な旦那様はコップを差し出してくれます。ありがとうございます! お礼をいうにも、空気を吸い込んだだけで喉が痛いから勘弁してください!
水は一杯だけで足らず、いつのまにか旦那様は追加で果汁を注文してくれていたようです。かさねがさね、ありがとうございます……。
「その、緑の粒が危険だ」
ようやく落ち着いた私に、旦那様は今更こんなことを言いました。
「さ、さきに、いって、ほし、げほ!」
辛すぎて喉が枯れてます。うえー。トラウマですよ。ですが、旦那様を恨むのはお門違い、根掘り葉掘り、質問するべきだったのですよ。うああああまだ喉いたいいいい。
さらに果汁飲料を追加注文します。それを持ってきてくれた店のおばちゃんが、、
「外の人にはそのままきついよ。そのうち病み付きになるけどね」
これが、病み付きですか……人体の神秘ですね!
初心者向けに、木の実から抽出した甘めのミルクを混ぜていただき、何とか食べました。甘いのに辛いって意味が分からない!
食事を終えて、立った時、何だかふわふわしている気がしました。足が少しもつれて、椅子の足を軽く蹴ってしまいます。
「おお」
辛さが脳に回ったのか、気分がふわふわしてきました。少し、楽しくて、自分の顔がゆるんでいるのが分かります。
食堂を出ると、辛さで全身にかいた汗がひんやりとした夜の空気に撫でられて、とてもいい気持ちです。
とくに、ほっぺたが熱くなってきましたひゃっほー!
私の隣を歩きながら、旦那様が口を開きます。
「……大丈夫、か?」
また同じセリフですよ、旦那様。
「らいじょうぶ」
辛さのせいで舌が回らないのです。
あたまが、ぼーっとしてきました。なんだろ、この気持ち。楽しい! 今なら歌って踊りながら、いろんなひとに抱きつきたい気分です。うへへ。
「大丈夫じゃないな」
勝手に断定され、私は唇を突きだして抗議します。
「とってもしゃっきりしていますよ」
あ、その目は疑っていますね! 失礼な!
だから……
「dxxxvvvjy0wwbww!(大丈夫!)」
「末期だな」
ちゃんと星語でも喋れるよ! と主張したつもりが、逆にため息を吐かせる結果になりました。
「辛い、だけなのに?」
「辛さじゃない」
はっきりしませんね!
もどかしい会話に、また足がもつれました。こける! と体を固くしたとき、力強い腕に支えられました。
「もういい。N*mwwr*(眠れ)」
いつもより強い調子の星語を聞いたとたん、あたまが、ぼーっと……。
窓の外で、平和な小鳥さんたちの声が聞こえています。
朝です!
朝です、が。ベッドに入った覚えがありません。
「あれ?」
目を覚ますと、頭のすわりの悪さを感じました。ごそごそと動くと、うなじのあたりで髪をまとめたままです。いつも、寝るときはこれを外して寝ています。上向きで寝るから、首筋に何かがあるのが気持ち悪いんです。
なのに、今日はそのまま寝ちゃっています。なんでだろ。
「起きたか……」
隣から、ものすごく疲れた響きの声が掛けられました。
「おはようございます?」
「おはよう」
挨拶をすれば、律儀に返事があります。その声も、疲れている感じがしました。
横を見れば、旦那様は目元を手で覆って、深いため息を吐いています。
寝て起きたばかりのはずなのに、疲労困憊しているって、どういうことでしょうか。
謎の状況に起き上がります。見下ろせば、服も昨日の夜のまま。つまり、着替えていません。ですが、半分脱ぎ掛けているというか、ぐちゃぐちゃな状況です。さすがに下着が丸見えなのはどうだろうと、簡単に服を直しました。あああ、ちゃんと脱いでないからぐちゃぐちゃになってる! しわ、とれるかな。
「体調は?」
「へ?」
私より、旦那様のほうがかなり疲れている様子なんですが……。問いかけの意図は分からなかったけれど、
「いつも通り、元気」
と答えました。
そうか、と言いながら旦那様は珍しくそのままベッドに沈み込みました。肺から空気がなくなるんじゃないかと思うぐらい、長い長いため息を吐きます。
私はその溜息に硬直しました。
これは、危険なサインです。
つまり、お説教の予感というか、注意されるときの前段階というか……なにか、しちゃったのかな。汗がにじみます。
ため息のあと、旦那様はまっすぐ私を見つめて、一語一語区切るように強く言いました。
「ひとつ、頼みがある」
「は、はいっ」
「酒は二度と飲むな」
「へ?」
何のヘビーな話かと思いきや、お酒?
「返事は」
「あ、はいっ。もう飲みません……?」
二度とっていうことは、私は酒を飲んだんでしょうか? 頭が疑問でいっぱいになります。それを察した旦那様が、これも珍しく寝転んだまま私を見上げて、
「昨日、辛いものを食べた時、間違えて飲んだだろう」
と補足しました。
そういえば、喉と胃が熱くなった覚えがあります。そうだ、あそこでお酒飲んでいましたね!
でも、なにか問題が?
「昨日の記憶は?」
「記憶ですか?」
忘れやすい私でも、ちゃんと覚えていますよ! 食堂を出て、最後の記憶は旦那様の眠れという声です。
「道で、星術を使われて眠らされたまでは、覚えています」
これで完璧でしょう! と胸を張る私に、旦那様はもう一度、目を手で覆って、長いため息を吐きました。
「覚えてないか……」
「へ?」
旦那様はそのまましばらく考え込むように、じっとしていました。
気まずい沈黙が流れます。何があったんでしょうか。
昨日の記憶ってなんですかあああああ!
脂汗をだらだら流す私。口を開かない旦那様。
「もういい」
終わったことだ旦那様は話を打ち切りました。よくよく見れば、私と同じぐらい服がぐちゃぐちゃです。
「疲れているなら、ね」
寝てたら、と続けようとした言葉は不自然に途切れてしまいます。大きく開いた襟元の、鎖骨のあたりに朱いものがみえたからです。歯型? キスマーク?
いったい、いつそんなものを付けたんですか……?
私の驚いた視線をたどって目線を落とした旦那様は、
「誤解がないように言えば、これは昨日お前にかみつかれた跡だ」
と淡々とおっしゃいました。
「……私に?」
「お前に」
「かみついた?」
「ああ」
あっさり頷いてほしくありませんがね!
「あの、昨日の、状況を、説明してください」
がちがちに固まって、ベッドの上で姿勢を正して座りながら、おそるおそるお願いしました。
「お前には術の耐性がある」
それは知っています!
「簡単な術では、効果が薄かった」
寝かしつけようとした術ですね! あの時点で、私は酔っ払いだったようです。そういえば、気分がとてもうふふあははってふわふわしていました。
「部屋についたとたん、寝かせようとしたら暴れた」
「あ、あばれた?」
「正確には……」
話の途中で、ぶつりと言葉が途切れました。これも珍しいことです。
言うのをためらっているように感じました。
だいたいこういった場合、続く言葉は聞かなかったらよかった! って思う内容なんですよね!
聞きたくないけれど、質問したのは私です。ちゃんと聞かなきゃね。
たっぷりためらった後、とても短い言葉で昨夜の状況が告げられました。
「酔ったお前に襲われそうになった」
お、おそ、ったって、えええええええ。
ぶわっと毛穴という毛穴から汗が出たああああ!
「えっと、その、あの、叩いた、とか? け、怪我は」
「怪我はない。襲った、というのは別の意味だ」
暴力的な意味ではなく、あれの方面ってことですねっ。正確に解説、ありがとう、ございましたあああ!
だらだら冷や汗を流して、言葉を探しました。
が。
「すみませんでしたあああ!」
平身低頭で謝るしかありません!
覚えてないけど、なんかすごいことしていたみたいです!
朝なのに疲れ切った旦那様は、これもまた珍しすぎることに、起き上がりませんでした。
「……寝る」
「はい! おやすみなさい!」
こんなに精神的に疲れさせているって、私、本当に何を……。
とにかく、お酒は飲まないようにします。
心に誓いました……。
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「町民C勇者様に拉致される」
にとても感動しました!!
一冊買ってしまったら二冊三冊と次々に買ってしまって…
いまでは一番お気に入りの本です!!
一巻から勇者様や町民C、神官様を中心に
色々と心を変えていく姿や
戦って生きるのに一生懸命な姿に涙しました!!
これからも応援してます!!
いつか始原の勇者がどんな子供になるか楽しみです♪
初コメ長々と失礼しました!!