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« ちょっと書いてみた さらに次の朝の話 | 小ネタまとめ »

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ちょっと書いてみた 続き その夜の話

この間の続きが気になるとのお言葉を多数いただき、頭をゆだらせて、頑張ってみました。
といっても、またうっすらとしたもの……だとは……思いますので……(自信なくなってきた)

とりあえず、恋愛要素が苦手な方は、回避ください。

ただ、旦那様はかなり怒っていらっしゃる、という内容です。

作者の心は、もう折れまくりでした。ピュアなのかあれなのか、奇声を上げて山の中を走り回りたいぐらいです。通報されますが。


前回よりかなり恋愛風味の強い内容です。
それでもOKなかたは、この記事の左下の「つづきはこちら」からどうぞー



「脱げ」
宿のお部屋に落ち着いて、一言目からそれでした。荷物を置いて速攻です。
じっと見られて、ぶわっと汗が吹き出しましたよ!
いやなんていうか、端的な命令なんですが、それ、すぐには応じかねますっ。
いろいろと、その、ええと。
無理!
「そのっ、いや、あの、」
「剥かれたいのか?」
剥くってあなた何言いだしてるんですかっ。ぱくぱく口を動かすけど、うまいこと言えません!
冷や汗がだらだら出てきました!
思わず後ずさってしまったの、仕方ないと思うよ! 誰でも後ずさるって!
なによりも……明らかに、機嫌が悪いですし。
さっき崖から落ちた直後より、何だか機嫌悪くないですか?
星術で緑に変えた瞳は、感情の高ぶりでたまに蒼に戻ります。強い星術じゃないらしいので、本人の存在値に負けるとかなんとか。
つまりですね、今ですね、微妙に青緑な目に見えますよねー……うわあああん! なんか知らないけど怒ってるううう!
「ごめんなさい、なにかとごめんなさい!」
「謝るぐらいなら脱げ。背中から腰のあたりを見せろ」
へ?
言われたことを頭の中でぐるっと咀嚼して、おお、と手を打ちます。
「せ、背中だけ?」
「腰のあたりも。さっき、座るときに痛みがあっただろう」
その言葉に、どきりとします。確かに食堂でご飯食べたとき、椅子の背もたれにもたれかかろうとした時、痛みが走って反射的に跳ねちゃったんだよね。普通にしていたら全然痛まないから大丈夫かなーって思っていたんだけど。ばっちりばれていたようです。
こんなふうに、私自身気付いていないことをよく指摘されます。観察力が鋭すぎますよ。私がぼんやりしているのかもしれませんがね! あ、そっちか。私がぼんやりなだけか。
ともかく、機嫌が悪いまま、仕草で服をめくってベッドに横になれと、指示されました。
「落ちる時に打った可能性がある」
そーうーいーうーこーとーですねっ!
了解いたしました!
そういうことならいくらでも見せる用意がありますよっ。今すぐにでも服をぺろりとめくりますよ! さすがに恥ずかしいので、後ろを向いてですが。
何と勘違いしたかは、突っ込みされたら倒れる自信があります! 恥ずかしくて! 倒れますから!
言われるままにブラウスと下に着こんでいる服をぺろりとめくって、お腹を出します。コンニチハ私のふんわりお腹。相変わらず腹筋は割れていません。割りたいな、割れるかなーと苦節2年、無理でしたが。
服をたくし上げて、自分で見下ろしたその先、いつも通り白いお腹があると思ったんですが。
「うわー……」
おもわず口の端っこがひくっとひきつります。
これはヤバい。
見える左脇腹が、青いというか黄土色というか、その、ありえない色合いなんですがっ。見えている脇腹だけでこれなんで、後ろは怖くて見えませんよ! 道理で妙にポカポカすると思った! つまり打ち身だったわけですね。納得しました。
これは言われたとおり、腰までつながっているようです。見える範囲だけでも広い。大人が手を広げた範囲ぐらいですね! 背中、見たいような、見たくないような。
結構広範囲で、きわどい部分もあるから、めくったまま寝台にうつぶせになります。ない胸でも、無駄に露出させません。恥ずかしいって!
ベッドの横に立って、じっと打ち身のあたりを見られています。めっちゃ見られてるのが分かるけど、怖くて上を向けません。とりあえず、私にできることはおとなしくうつぶせで転がることだけですよ。それが一番平和です。
「触るぞ」
「はーい……」
ちょっと冷たい手のひらが打ち身を撫でました。診察しているのが分かる触り方に、ちょっと緊張がほぐれます。
前に聞いたことがあるんだけど、どうやら私は『視え』にくいんだって。コードは変わった、でもこの器は星原樹が作ったものだし、神様からお預かりしたのや始原つれてたり、そのくせ持っている存在値は一般人位なものだから、どれだけ耐久性があるかとかさっぱりわからないんだって。
前に大けがをしたとき、そのせいでわざわざ神官様を呼ぶ羽目になりました。
自分で癒せないのかって? 今の存在値じゃ、結構無謀ですよー。
というわけで、治療の時はまずじっくりと『視られる』んだけど。
居心地、悪いです……。
「Itxxxmvvv n0 Kxxxnnwxxx,S0shvvvkvvv n0 Shwwwwfwwkww./」
 ――痛みの緩和、組織の修復。
様子を見ながら、やんわりとした術をかけられます。こういった治療系の術が得意じゃないのを知っているから、余計に申し訳なくて、縮こまっちゃいます。
痛みとは別の熱がじんわりと染みて、気持ちよくてボーっとします。蒸しタオルを乗せてるような感じです。効きますねー。
「これで少しはましになったはずだ」
「あ、はい、ありがとうございます!」
とはいうものの、まだ何か気になることがあるのか、手のひらをのけてくれません。
どうしたんだろう、と横を見あげます。
見上げた先には、怒っているような……悲しんでいるような表情が一瞬よぎりました。
そのまま、私が転がる横に腰かけて、見下ろされます。まだ不機嫌そうなのは分かりますが、さっきよぎった表情がどうにも気にかかりました。
治療してくれたあたりを見ながら、
「俺は、壊すことしか能がない。だから、気を付けてくれ」
と硬い声が落とされました。その強張った声に、おなかのあたりに重いものが入ったような気持ちになります。
下手にお説教されるより、これは効きました。
私が思っているより強く心配をかけていたようです。
言葉を探しあぐねていると、横に座った人が、私の上に覆いかぶさって、背中から抱きしめられました。
さっき治療したところに触れないように、慎重に手を回されます。
うっ、脇とか、実はかなりくすぐったがりなんですが、根性で耐えますよ!
絶妙に体重をかけないようにして、重なったまま大きくため息を吐かれます。吐息が首筋をかすって、背中がぞわりと粟立ちました。
私は、抱き枕ですよ! そう自分に言い聞かせておとなしくします。
う、うーん……崖から落ちたことは、想像以上にこの人のトラウマをひっかいちゃっていたのかもしれません……。一度、目の前で大けがをしたことがあって、その時の取り乱しようがすごかったので。自分が傷つくことは全く平気なくせに、他が傷つくことにすごくショックを受ける人だと、かなり実感した出来事でした。
落ち着くまでこうしていないといけないかもしれません。
自分で見えてたとこも、結構酷い打ち身だったしな。後ろもすごかったんだろうなって思います。だって、めったに使わない治療の星術まで使っていましたし。
こうやっていることに異議はありません。ないんですが。一点だけ、主張したいことがあります。
「その……旦那様」
「なんだ」
返事がいつも通りの響きで安心します。ほっとしながら、言いました。
「服、戻していいですか?」
思いっきりお腹、触られていますので、そろそろ戻したいなーと。
言ってみたわけなのです、が。
……何で、旦那様、無言ですか。
どうしようもなくて、固まっていると、手でお腹を撫で上げられました。
「っ」
反射的にあげそうになった悲鳴を押し殺して、大きく息を吸って落ち着きます!
ええ、取り乱したら負け! 負けなのです!
「まだ明るいですよ!」
「もうすぐ夜になる」
「荷物整理もしてませんし」
「明日でいい」
「その、あの、」
頭の中でいろいろな言葉を並べて告げようとした矢先に、耳元で、一言だけ、ささやかれました。
自分が爆発するように真っ赤になるのが分かります。
滅多に言わないそれ、今、この場面で言いますか!
反論も、逃げ場も、全部やわらかく封じ込めているくせに、
「嫌か?」
最後の最後まで私の意思を聞いてくるこの人に、嫌だと言えるわけがありません。
何とか呼吸を整えて顔を上げた先に出会った、静かな笑顔に、勝てないなあと観念して目をつぶるのでした。
 

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町民C 本編2年後の話 : Comment (0)

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