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連休というもの


気が付いたら、世の中クリスマスだった。

クリスマスだった!!!

タイムスリップしたような気持ちです。マジですか、もう年明けですか! 年末何処へ行く。

というわけで、ツイッターに投げ込みましたが、クリスマス(?)SSです。

頭を抱える4巻の作業が始まっているため、勘を取り戻すためにちょこちょこ書いています。

よろしければ、おつまみ代わりにどうぞ。

追記、ツイッターの、あまりに描写不足なので消しました。


2巻の真ん中ぐらいの時間軸です。



 
 今日は平和です。

 補給と休養のために、こじんまりとした街に滞在しています。

 この街ではあまり瘴気を見かけなかったし、気分的にものんびりできます。いつもより3割増しで私はのんびりしていると思います。
 それにまだ眠気が来ていないので、結構元気ですよ! ぴんぴんしています。今日も元気で、ご飯がおいしいです。

 勇者様はお出かけ中、神官様に授業めいたものを受けていました。
 前にお願いした地理とかその他もろもろです。雑談なのか授業なのか微妙だけど、それはそれで気にしてません。
 
 その最中、私はふとあることを疑問に思いました。
 
 疑問は、いつもとりあえず神官様に聞いています。全部返事を返してくれる神官様の知識の深さに、毎回おののきますが! 私の頭の創りと違うのは分かっています。ええ。

 先生に今日も質問です!

「誕生日?」
「はい、誕生日です!」

 私の質問に、神官様は難しそうな表情になりました。
 誰の誕生日かというと、それは、

「神の発生に関しては諸説ありますし……現在も議論がされているところではありますが」

 なんだか難しそうな話題になりました! いや、知識の足りない私の、ささやかな疑問ですよっ。
 
 神様って誕生日があるのかなーって。それだけの疑問なんですが。
 私が質問を撤回しようとしたところ、神官様はとても綺麗に笑われました。私は背筋を伸ばします。これはロクなことが始まらない! 状況は把握しましたっ。

「そのあたりの話は、先週の授業でおはなししましたよ」
さすがは神官様、私にどこまで教えているかって、ちゃんと覚えていらっしゃいます。私はどこまで教わったか、さっぱりですがね! 威張るとこじゃないけど。
「す、すみませんっ」
「そもそも、現在の神話自体の信ぴょう性が疑われているのですが、それは、それを記した文章自体の信ぴょう性の問題で……」

 思い出しました。思い出しましたよ、神官様! 先週おうかがいしてさっぱりわかんなかったところですね! 
 うあ! 地雷を踏みぬいた気がします! これは聞いてはいけない質問だったあああ!
 神官様の難しいお話についていけない私は、口をあんぐり開けていました。
 神官様は、徐々にご自分の思考に入ってしまったようです。独り言なのか、授業なのか分からないけど、とりあえず、たまに相槌をうちます。わかんないけど。わからないからわかったふりはしない! それは私のポリシーですっ。一回言ってみたかっただけですが。ポリシーって。
 
 神様って誕生日あるんですか?

 私のささやかな疑問は、結構世界の謎に踏み込むものらしいです。
 ちょっと思っただけなんですよね、神様でも誕生日があるのかなーって。
 そうしたら歴史の講義が始まりました……。意外と歴史関係には熱いんです、神官様。そういえば、昔領主様のお屋敷で建築物眺めていましたね、思い出しました。

 長いお話で分かったのは、結局神様の誕生日って、世界が始まった時かどうかわかんない、だって誰も知らないんだもんって感じですか? 短く、子供にでも分かるようにまとめてくださいっ。

 ノックもなく、不意に扉が開きました。カギの音がしたから、相手は分かっています。
 用事を済ませて帰ってきた勇者様が現れました。半分没頭しながらお話している神官様、魂の抜けかかっている私。

 勇者様は、こちらへちらりと視線を投げられました。

 私は懸命に目で訴えますが、すっと目線を逸らされました!
 酷いです、勇者様。
 私の無言の訴えを無視しましたねっ。分かってて無視しましたねっ。

 勇者様のスルーにより、私はしばらくここに座り続けるというお仕事が決定しました。だって、耳を傾けても難しくて……。本当にすみません。ありがたいお話なのに、すみません。座っているだけで私の意識がすーーーーっとどこかに……。
 神官様のお話についていけなくて、意識が遠いところに行きかけた私は、半分寝ていたようです。
 「口が開いていますよ」
 はっ。かろうじてよだれは垂れていないようです。
 守られた! 私の何かは守られた!! 

「とにかく、結局のところ、人間には分からない、ということですよ」

 やっと結論ですね、ここまでの道のり、とても長かったです。それこそ、意識が遠くを旅して帰ってこれる程度にっ。気が付いたら勇者様はまた居なくなっていました。さっきまで部屋にいたのに、いつの間に! 瞬間移動ですかっ。
 きょろきょろする私に、神官様は、ああ、と声をこぼしました。
「勇者なら、帰ってすぐに出かけましたよ」
 没頭しているようで、ちゃんと把握しているようです。
「神官様、よく御存じでっ」
「あなたが寝ていただけだと思いますよ」
 神官様の適切なツッコミに、ぐうの音もでません。
「えーっと……神様の誕生日は不明だということは分かりましたっ」
 ちょっとは聞いていたとアピールしてみます。最後だけですけどね。お話がまとめに入ったことを逃しません。私も強引に質問を締めくくります。逃げ腰だと言わないでくださいっ。こう、なんというか、こちらからお願いしている勉強だけど、わからないというのが言い難いというかっ。
「まあ……その程度の理解でいいとしましょう」
 ため息を吐く神官様。そして、そうですね、と冗談のように付け加えられました。
「それこそ、星原樹ぐらいしか知らないのでは?」
「星原樹って、お話しできるんですか?」
「今のところ、人間以外で明確な言語をもつ生物は確認されていません」
 木がおしゃべりする……そんなメルヘンなことがあったら面白いのになー。
「で、なぜ急にあんな質問を?」
神官様の疑問に、私は素直に答えました。




 虚空で彼女は昔馴染みにその話をした。神子の他愛もない日常を、彼女はよく彼に話す。
 今日は体調がよいのか、起き上がって身振り手振りで様々なことを話していた。
 一生懸命に話す彼女に、彼は基本的に口を挟むことは少ない。
「相変わらず突飛な発想だよねえ」
垣間見えた神子の生活は、彼女にとってはとても新鮮だった。楽しくて、何度もその記憶を反芻する。
「私の誕生日はちゃんとあるからね、お祝いして!」
「その時に暇で、覚えていたらね」
「本当?」
「覚えていたらね」
 記憶力がいいくせにそんな風に言う彼を、彼女は心配し、提案した。物忘れがひどくなっているのだろうか? 実際のところ、彼の言いたいこととは、全く別の方向への心配ではあった。
「記憶力が落ちてきたの? 記憶に術で刷りこんであげようか、そしたら忘れないよ?」
 彼は虚空に頬杖をつき、呆れた風に彼女を見やる。
「さりげなくひどいことを言うね、君は」
「だって神子がおじいちゃんだって言ってたし」
「僕がおじいちゃんなら、君はいったいなんになるんだ」
 なんだろう、と彼女は無邪気に首を傾げた後、もう一度話題を強引に戻した。
「それはそれとして、ちゃんと祝ってね?」
「覚えていて、祝える状況だったら、ね」
 彼はできないことは口にしない。今の曖昧な返答が、最大の譲歩だということを彼女は知っていたため、それ以上はその件については話さなかった。

 彼女は楽しそうに思い出し笑いをする。さっきの話だけど、と前置きをした。
「そんな質問をした理由がまた面白くてね」
なんとなく嫌な予感が湧いたのか、彼は微妙な表情をして彼女を見る。
「ロクな理由じゃなさそうだね」
「私は、あの子が言いそうだなあって思ったけど」

『神様の誕生日があるんだったら、その日は世界中でお祝いしたらいいんですよ! つまりお祭りっ』

「おいしいものが食べられるし、みんなが楽しいから世界平和になるんだって言ってた」
「なんというか……」
 神子らしい、というしかない。だいたいその言葉で片付いてしまう神子のことを、彼女がどう思っているのかは、彼には計り知れなかった。

 不意に訪れた沈黙、口を開いたのは彼のほうだった。
「……結局、君は知っているの?」
彼の質問は珍しい。んー、と彼女はしばらく考え込み答えを探す。
「それこそ、神様だけが知っていることだよ」

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